世界をサスペンドするメインヒロインが成立させる日常系ライトノベル

ToHeart』から『ONE』の間で決定的な日常の変容が起こった説とかあったなあ。俺の中で。簡単すぎに言うとダイナミックな日常からスタティックな日常への変化。THだとマルチルートだけがスタティックな日常でそれは例外だったんだけど、例外が常態になった。
そんなこんな話もしたのだが。→ギャルゲーとの違いから考えるエロゲーの「日常」 - 猫拳@はてな
ごめん俺まちがえた。THの日常はモラトリアム的心性からは微妙に外れるものだったね。志保で死んだプレイヤーってKeyを経由した後追い組が多かった気もする。偏見。
ストーリー上のポイントオブノーリターン、世界の破綻(=エロシーン)をサスペンドするための日常、というのがエロゲー的発想。
このエロゲー的スタティック日常をライトノベルに移植しようとする場合、エロゲーとは質的に異なる「ストーリーを進めようとする圧力」をいかに回避するかという問題が出てくる。そこで、世界の法則を担うメインヒロインが積極的に世界/ストーリーをサスペンドする必要がある。
というのは、ゲームにおいては、原理的に、フラグが立つ瞬間まで日常はスタティックたりうる。しかし小説は違う。また、ストーリーの開始から「オチ」までの間に取れる文章量が圧倒的に違う。紙媒体で出版されるライトノベルには1冊ごとのオチが必要になる。連載ベースの漫画とも事情が異なる。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は、メインヒロインが攻略不可であることによって、その周囲でいかに激動が起ころうとストーリーはポイントオブノーリターンを迎えない。そこで終わらせ方が深刻な問題になってくるのだが、現状構造的に最も強固な日常系といえる。
僕は友達が少ない』だと、小鷹が夜空を思い出さないことによって世界がサスペンドされている。その間のストーリーの進捗を担うのが星奈。星奈が、夜空の凍結された進捗度に追いつくと何かが起こる。起こさざるを得なくなる。
そのようなメインヒロインが存在しなかった『ラノベ部』がいかに特殊で希少であるかという話で。