『ハートキャッチプリキュア!』EDに見る長峰監督の濃ゆ〜いプリキュアオタクっぷり

さて、厄介なEDについて検討します。こちらは話の前提が多いので、解説が多めになります。

ED主題歌「ハートキャッチ☆パラダイス」について

歌唱は工藤真由です。プリキュアシリーズのED主題歌は、伝統的に歌唱力より「可愛さ」を重視したシンガーが選択されています。プリキュア5の第一ED主題歌「キラキラしちゃってMy True Love!」を担当した宮本佳那子が象徴的ですね。フレッシュではそのパターンを崩しましたが、OP主題歌「Let's!フレッシュプリキュア!」のパワフルな曲調に対して、EDのシックなダンスナンバー「You make me happy!」が「力の抜ける」歌だったことには違いない。
ところが工藤真由は、5のOP主題歌を担当していることからもわかるように、パワフルな歌唱が持ち味で、明らかにOP担当の池田彩より「強い」わけです。まずはそこに違和感があったんですが、「歌・工藤真由」の意味はサビで明らかになります。

映像について

フレッシュから継続の3DCG&ダンスEDですが、まず、キャラデザからして3D化が苦しい、というのは指摘しておかなければいけません。頭がでかいし、手は長いし(恐らくダンス表現のため長めにアレンジしてあるのでしょう)、肩がなんかきもちわるいし、フレッシュに比べるとモデルの出来は厳しいかなーと。ついでに、二人の体格差が無視されているのもマイナス。身長差があったら見栄えが悪いので、仕方ないんですが……。ともあれ、言ってもどうにもならない愚痴はこれで終わり。


改めて、キャプチャ画像を交えて見ていきます。飾り付けられた教室が舞台です。なにを連想しますか? ここは、『おジャ魔女どれみ』一期OP「おジャ魔女カーニバル!!」を思い出しておきたいですね。主要スタッフが『どれみ』出身の『ハートキャッチ』らしい。
おもしろきこともなき世をおもしろく。つまらない学校生活を楽しく変えていこうというテーマがここから読み取れます。また、「手作りの飾り付け」というのが非常に重要。これは後で利いてきます。


同じく飾り付けられた廊下。Aメロが学校編なのはOPと同じですね。



Bメロはファッション編。元気よくおしゃれな曲調も含め、女児に受けがよさそうです。『きらりん☆レボリューション』辺りに近いライン……なんでしょうか。実はあんま知りません。
Aメロを同じく、「Change」がテーマですね。つぼみは実際に本編で「イメチェン」することになりそうです。
画像2枚はいずれもえりかにのみある演出。斜め下から飛び出してくるのと、ウインク。フレッシュのEDでは各キャラクターのモーションはほぼ共通でしたが、今回は随所に微妙な違いが見て取れます。もちろん、その方がよい。


投げキッスとともに変身するつぼみ=ブロッサム。OP編で触れた通り、やはりブロッサムがメインであることが強調されています。
さあサビです。これは色々と凄いぞ。


一転してゴージャスな曲調とともに、一面の花園にしつらえられたステージで踊る二人。サビの振り付けはフレッシュからの流れというより、『ふしぎ星の☆ふたご姫』のOPダンスを連想させますね。楽しくてしょうがない気分に、プリキュアらしい力感をプラス。
また、サビの背景は、フレッシュEDではいずれも摩天楼になっていました。それが花園に置き換えられているわけです。これ、重要。
花さかっぽく、花びらのような水滴のような、ハート型のなにかを振りまく二人。振り付けに作品テーマが絡めてあるのが実にすばらしい。
この映像はディズニー映画的なものを感じますね。カメラワークにしても、音楽PVそのものだったフレッシュEDに比べて、PV的なものと映画的なものの折衷になっています。では、なぜ完全にPVではないのかというと……


あれれ。


超カワイイ!


全景。虹をよく見るとひねった形になっているのがおしゃれです。
背景に目をやると、二人が振りまいているのと同じハート状のものが、下からも吹きあがっているのがわかります。これは「花を育てる」なにかだと解釈すべきでしょう。これも重要。


視点が移動、花園のすぐそばから頭上の二人を追うカメラワーク。さっきはよく見えませんでしたが、この「花」は全部、サイリウムを掲げた大勢の観客なんですね。ここ、超・重要! でも、超ややこしいので解説は後回し!
「歌・工藤真由」がここで納得されるでしょう。大勢の観客の頭上で堂々と振る舞うには、工藤真由の堂々たる歌唱力が確かに必要に思われます。
ともあれ、3DCGの繊細な描写力がなければ成立しない表現とですね。基本的に3DCGって嫌いなんですけど、これだけならではのものを出されると黙らざるを得ない。


決めポーズ。よく見ると二人の体の角度が違います。マリンは手前向き、ブロッサムは真横に近くなっている。ブロッサムの引っ込み思案な性格がこんなところでも表現されているわけですね。20回目くらいで気づいたわ! わかりにくいにも程がある!

ああ可愛かった。じゃあ、プリキュアオタク的な話をしましょう。

データカードダス「ドリームライブ」シリーズとの関連について

フレッシュで導入された3DCG&ダンスEDですが、プリキュアシリーズの歴史上、3DCG&ダンスというアイディアが最初に登場するのはプリキュア5時代、「うたって!プリキュアドリームライブ ?スピッチュカードでメタモルフォーゼ!??」に遡ります。これはカードダス&リズムアクションという体のゲームでして、衣装やアクセサリーがカードになっており、自由に組み合わせることができたんですね。つまり、3DCG&ダンスとファッションの組み合わせは、ドリームライブに立ち返ったものと解釈できます。しかもそれを本編のストーリーに落とし込んでいるのが凄い。

花園=観客について――プリキュア5GoGoのオマージュ

花園=観客がなぜ超・重要なのか。ここが難しいところです。まず、『ハートキャッチ』のシリーズディレクター・長峯達也がプリキュア5・GoGoの劇場版の監督を務めたことを思い出しておいてください。
過去作にかかわらない範囲の話としては、プリキュアと「花園」は相互にハート状のなにかを振りまき合っているというのが面白いですね。つまりプリキュアが人々に希望を与えると同時に、周囲の――あらゆる人の応援によって、プリキュアもまた「花開く」ということですね。学校の飾り付けとも、そういう点で繋がってくるわけです。
これに比較すると、背景が摩天楼であり、ライブではなくPVだったフレッシュのEDが、プリキュアと周囲の隔絶を表現してしまっていることが露わになります。

サイリウム=ミラクルライト

プリキュアシリーズにおけるサイリウム的なものの登場は、映画プリキュア5から登場し、その後の映画作品にずっと受け継がれることになる傑作演出・ミラクルライトに遡ります。
これは、劇場で子供に配られ、「プリキュアがピンチになったときに応援する」というコンセプトのおもちゃです。劇中ではココ・ナッツ・ミルクらのマスコット軍団や、戦う力のない一般人が使用しています。
つまり、ミラクルライトは、観客・視聴者・力なき民衆が、プリキュアの戦い=作品世界に参加するためのギミックであるわけです。オールスターズDXでは、ミラクルライトでプリキュアたちが復活した後の主題歌が流れるシーンで、背景に地球が描かれたりしましたね。

花園=キュアローズガーデン

「花園」については、そのプリキュアシリーズにおける登場はプリキュア5GoGoにおけるキュアローズガーデンに遡ります。これはいわゆる桃源郷ユートピアなのですが、多くの象徴的な意味を持った存在です。
まず、キュアローズガーデンに咲くバラは、全ての世界の全ての生命と繋がっているとされます。そのため、このバラが枯らされると、生命はその活動を停止します。
実際に終盤でこのバラが枯らされてしまうのですが、キュアローズガーデンと繋がっている全ての生命・あらゆる世界の人々から届いた手紙によってプリキュアは力を得、勝利することになります。
このシーンで、手紙の「差出人」が描かれます。





これは、先のミラクルライトからの流れと併せ、「TVの前の視聴者」を暗示的に含む、というのがぼくの解釈です。詳しくは同人誌参照。

観客=おれら

つまり、『ハートキャッチ』EDで登場する「観客」は、「視聴者」を暗示していると解釈できるわけです。イコール、視聴者の応援によってプリキュアは「花開く」ということ。そりゃあ応援したくなるってもんでしょう!
ちなみに、観客をよーく見てみると、成人男性ばっかりですね。まあここに女児ってのは絵面的にいかんのですが、大きなお友達もちゃんとお友達として見てくれていると肯定的に捉えようじゃありませんか。

まとめ

どうでしょう。どうなんでしょうこれ。凄くね? どんなプリキュアオタクが作ったんだよこれ!
というわけで、『ハートキャッチ』はOPもEDも傑作です。これだけテーマ性が練り込まれているのなら、本編でもしっかり描かれることでしょう。今後の展開が楽しみです。
さあ、CDを買ってプリキュアを応援しよう!

『ハートキャッチ』EDとGoGoの最終回が繋がっているということは……

フレッシュってなんだったんでしょうねえ。

おまけ 歌詞にやっぱりマリンちゃん関連ワードがない件

まあ、EDは映像に水要素があるからまだいいか。

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