声に出して読みたいアイマスソング「shiny smile」を再評価してみよう

このところ、supercell飛蘭曲のカッ飛んだリリックを見るにつけ、「センス」とか「題材」以前の「スキル」としての作詞について検討したいと思っていたのだ。例えば大半がアレなアイマス曲リリックの中で「shiny smile」が光る理由とか。
「shiny smile」は、女の子の心情を歌った曲でありながら女の子女の子した単語が「リボン」くらいしかなく一般化してるところとか、前向きさを感じさせる単語選びもいいのだが、技術的に優れているのはイメージの飛躍だろう。
疾走感溢れる曲調に合わせて、フレーズ移行で小飛躍→セクション移行で大飛躍を繰り返し、リリックにも推進力を与えることに成功している。具体的に検討してみよう。
歌詞引用しまくるけどバンナム許してくれ!

お気に入りのリボン うまく結べなくて
何度も解いてやり直し

冒頭は、女の子らしい日常性に溢れた情景。ここでは非常に親密な距離感なのだが、次でイキナリ距離感が飛躍する。

夢ににてるよ 簡単じゃないんだ

ただしこの時点ではリスナーの距離はシンガーに近い。

妥協しない 追求したい
頑張るコト探して ねぇ 走るよ

Bメロ移行に伴い、再び女の子にフォーカスするが、Aメロの最初のフレーズと違って焦点は心情にある。また、立ち止まっていた女の子の心情を「前」に向けてサビを準備している。

君まで届きたい 裸足のままで
坂道続いても諦めたりしない
手に入れたいものを数え上げて
いつだってピカピカでいたい
私 shiny smile

サビで女の子の心情は一気に走り出す。メロとのスピード差による牽引感が心地良い。また、ここでは脚で走っていることに注意。

朝起きて寝るまで 宝箱を開けることの
「ホント!?」繰り返し
驚くばかり 平凡じゃないんだ

Aメロ2。抽象度が上がっており、前後半でギャップを生じにくい。また、1番で心情を前向きに切り替えたことで、日常が喜びに満ちたものに変わっている、というストーリーも見える。
一度上げたスピード感をあまり落とさず走りぬけようという意図が見て取れる。

制御効かない 冒険したい
傷つくコト避けたら ねぇ ダメだよ

Bメロ1は停滞から躍動への転換だったのが、Bメロでは躍動からのさらなる躍動を表現しようとしており、全体を通じた加速感が維持されていることに注意。

君へと届きたい!転びそうでも
ブレーキを我慢して石ころをかわして

全くワードとしては登場しないが、自転車で走る情景を表現している。サビ1の徒歩から自転車に変わったことで加速感を維持。また、サビ1で上りだった道が平坦/下りになっており、やはり上がったスピードを維持している。
さらには、サビ1に比べてイメージの具体度が上がっており、心情だけが先走っていた状態から、肉体が伴ってきていること、走る生き方を実践することで感じているスリルを表現しており、シンプルなフレーズながらストーリー性が高い。

泣きそうな思いを乗り越えたら

で希望に伴う痛み、

いつだってキラキラでいたい
私 shiny smile ずっと

繰り返しのフレーズに付け加えられた「ずっと」だけで、来たし方と行く先を繋げている。直前の「泣きそうな思い」が利いている。

君まで届きたい 裸足のままで
坂道続いても諦めたりしない
手に入れたいものを数え上げて
いつだってピカピカでいたい

大サビ前の小休止パート。サビ1のフレーズを繰り返すことで、走り続ける動機を確認している。溢れ出す思いが追加ワード「私」にガッツリ乗ってくる。

君へと届きたい!転びそうでも
ブレーキを我慢して石ころをかわして
泣きそうな思いを乗り越えたら
いつだってキラキラでいるよ
私 君と

大サビはサビ2の繰り返しフレーズで、全体の加速感をリピート。追加ワード「君と」で目標としていたカレに追いつけたことを表現している。

shiny smile shiny smile ふたり ずっと…

アウトロ。カレに追いつくための笑顔が恋人同士の笑顔になり、曲調と共に加速から巡航へ移行。痛みが癒されて永遠の愛を予感させて終わり、と。なんつーいい歌だ!
内容的には完全なる春香曲なんだけど、千早・律子入りのMASTER VERSIONのほうが共感の輪が広がる感じで素敵ですネ。
全体的に、イメージの飛躍を繰り返しつつ、直前のフレーズで次の飛躍を準備している段取りの良さが際立つ。リスナーを引っ張りまわしながらも、大サビでキッチリ復習させる詰めの正確さもポイント高い。
Bメロの"制御効かない"、サビ2の"ブレーキを我慢して石ころをかわして""泣きそうな思いを乗り越えたら"、大サビ前の"私"あたりが個人的ゾクゾクポイント。