アンチ・パワーである上条当麻に寄り添う者

さあ、禁書目録について飲み屋テンションでしゃべるシーズンがやってまいりました!(訳:アニメ二期はじまりました)
上条さんが大きな権力(例えば国家)にケンカを売らないのは、そこに属している人を「悪」とは見做さないからでしょう。ローマ正教20億人全員をぶん殴って回ることはできない、ということを上条さんは言っている

ここでいう上条さんの天敵というのはつまり後方のアックアであり、そげぶしても倒せないアックアが18巻で上条さんと比肩する存在として語られることは戦闘能力特性においても担保されている。
『とある魔術の禁書目録』雑談。主にオルソラ - 猫拳@はてな

つまり17・18巻で明らかになったアックアの過去は、上条さんの行動と重ねあわせることが可能だということ。
上条さんは英雄でも勇者でもなく、傭兵なのだから。「助けを求める者と共に戦う」のが上条さんの本質。上条さんのこうした性質を非常によく理解しているのが御坂妹で、これは8巻で明らかになるところであります。
しかるに、上条さんが能動的に誰かと敵対したり、自分ひとりの力で敵を倒したりしないことは、それはもうそういう話だから仕様がない。
上条さんはアンチ・パワーなのだ。数値的「戦力」として数えられることはないし、「権力」も持ち得ない。それゆえに、環境を荒らすことなく力を持たない者の見方になれる、というのが上条さんのヒーロー性。
例えば、株式市場で巨大資本が動けば必ず環境に影響を与えるように、『禁書目録』では、パワーは時に持ち主の手足を縛るものとして描かれている。わかりやすいのは17・18巻のイギリス編。
また、アニメ2期のエピソードにも関わってくるが、政治的観点から、イギリス清教が学園都市に過剰な戦力を派遣することができない、という描写がしばしば見られる。そこで活躍するのが上条さんであるわけだ。
パワーとパワーの狭間で抑圧される弱者の、側にいて共に戦う者。このへんがはっきりしてないから2巻は微妙なのだが
地巫女・姫神秋沙が存在感ゼロな一方、オルソラが地味に人気あるのはそのへんの違い。オルソラは上条さんと「共に戦う者」だ。
で、インデックスと御坂美琴を巡るビミョーな問題てのがたちあらわれてくる。とりあえず、この二人をダブルヒロイン仕立てで見せているアニメ二期は大失敗と言わざるをえない。確かにヒロインNo.1と2ではあるが、立ち位置が違いすぎる。
インデックスと美琴はどちらも「お姫様」、上条さんによって戦いから引き離されているヒロインではあるが、その理由が違う。簡単にいうと、インデックスは上条さんの身内だが美琴は違うのだ。
インデックスには基本的に戦闘能力はない。ついでに収入もない。インデックスは上条さんにとっては「守るべき身内」だ。というか、記憶喪失の上条さんにとって、インデックス以外の「身内」は存在しないとすらいえる。インデックスを守ることだけは、傭兵としてではない、上条さん自身の戦いだ。
一方、美琴はケンカが強い。上条さんよりよっぽど強い。にもかかわらず上条さんが美琴を戦いから遠ざけるのは、「巻き込んではならない一般人」だからだ。もちろん、エツァリとの約束とかもあるのだけど。一方、「美琴の身内」を守る戦いにおいて、上条さんは美琴と「共に戦う」。(8巻)
美琴が一般人だってのはどういうことかというと、「平和な日常」みたいなものを信じているということ。実は、一方通行もそうなんだけど。オルソラとかは、日常は非日常と紙一重で、誰しも何かを守るために戦わなきゃいけない瞬間があることを知っている。
こういう人は、戦闘能力の有無にかかわらず「戦士」であり「英雄」である。ということが書かれているのがやっぱり17・18巻。イギリス編はオールスター全員集合なためもあって、『禁書目録』のテーマ性を如実に表したストーリーになっている。
上条さんはアンチパワーだから、いわゆる「上条勢力」を、「身内」とも「戦力」とも捉えていない。そのへんを「パワー」な人は理解できないというのが16巻。そういう「傭兵」に対する「お姫様」の微妙な感情は、美琴とヴィリアンで重ねあわせられるところ。
アックア自身、パワーとアンチパワーの狭間で葛藤してきたから、あえてパワーでもってアンチパワーたる上条さんに疑問を突きつけてる、みたいな読み方はできる。
禁書目録』の最近の展開は、ヒロインの状態で見ると、『フルメタル・パニック!』の終盤と似たような感じでなくもないのだけど。千鳥がああなるとイライラするけど、インなんとかさんインなんとかさんだから別にどうでもいいというのはいいのか悪いのか。
ともあれ、インデックスのヒロイン性については一応、最近の展開では担保されている。ずーっと難しい立場なのが美琴で、今までは上条さんに関わらせてもらえない悲しみ、というのを焦点に置いていた。しかしそれだとハイハイ報われないNEで終わっちゃうので、なんか考えないといけない。
逆にいうと現状の美琴は単なる報われない脇役なので、アニメ2期のダブルヒロイン扱いは持ち上げすぎだ。美琴全然活躍しねーじゃーか、という不当な批判が生まれる要因になりかねない。
上条さんの理解者って、科学サイドでは御坂妹、魔術サイドではオルソラだと思うんだけど、この二人はどちらも、自らが「弱者」でありながら、何かを守るために立ち上がろうとした人なんだよね。そういう人は上条さんの性質と親和性がある。
で、誰でも助ける上条さんに対して、自分の大切な女しか助けない一方通行とはまづらが「n人目の主人公」として浮上してくるのが19巻までで、彼らと同じ境地に立った上条さんまた同時にロシアに降り立ったりすると。
逆に、守るべき女ができた男は、色んなものを見捨てられなくなってゆくというのが20巻なんだなー。これを逆に読めば、上条さんにも元々誰か一人を愛する才能はあるということになるのかもしれない。
上条さんの心情は確かにわかりにくい。あれは、脇役の立場になって、「ありゃ一体何なンだァ……?」と一緒に首を捻らなきゃいけないようなキャラクターではある。そこで、インデックスがいまいち上条さんをわかってない感じがするのが、よくないのかもね。
そこで、ねーちんとかは上条さんを変に理想化してるからまたよくわかんなかったりする。重要な証言としてはSS1のオルソラと、16巻の美琴だろうなー。結局、つまんねえ結論に落ち着いてんなよってことなんだけど、彼自身が自分の人生をどうしたいのかはなおわかりにくい。
まあ結局、上条さんは相手の立場でしか話をしないんだな。お前の行動はお前の正義に反する、という。例外がテッラとフィアンマ。テッラの場合は会話が成立しないレベルの腐れ外道だったため。フィアンマの場合は上条さんがブチ切れてたため。