- 作者: 白瀬修,ヤス
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2007/05/12
- メディア: 文庫
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概ね、期待通りの内容といえます。
魔法少女とはなんぞや、ということについては、本家のほうで何度か書いてきました。主な主張としては、「少女が大人の女性へと脱皮しようとする過程にあるエネルギーこそが、魔法なのだ」というようなことです。特に変身ヒロイン系については、変身後の姿が「少女のあこがれるオトナのオンナ」という形で、シンプルに解釈できます。
では、オトコノコが魔法少女になるとは、どういう事態なんでしょうか。ブロッケンブラッド (ヤングキングコミックス)では明確に描かれなかったこの命題に対する回答の一端がこの作品にはあります。
そう、自己実現です。
『ブロッケンブラッド』『おと×まほ』は、カワイイ男の子が嫌々魔法少女をやらされる、というところまでは一致しています。ついでに戦い方がちょっと肉体派なのも同様です。そしてそこで、女装しているほうが似合う、という描き方がされています。
『おと×まほ』で「自分は自分、自分が望む自分」という宣言がなされていることが、ここにおいて決定的に重要な意味を持ちます。『おと×まほ』で扱われているのは、(極めて粗雑な描き方であるとはいえ)コンプレックスの問題です。彼方にとって自分の外見はコンプレックスの象徴なのですが、それが消えることのないまま解決されているのが見事です。つまるところ、自分の現状に少々気に食わぬところがあり、またそれが他人にいくらか厄介な受け取られ方をしていたとしても、自分が自分の望むまま振舞うことに何の障害ともならない、ということです。
魔法少女になっちまったもんはしょうがない、しかしそれは気に食わない奴をぶっ飛ばし、守るべきものを守るために何ら問題とはならない。むしろそれは「自分そのもの」であるがゆえに――コンプレックスの象徴であったがゆえに、自分にとって最大の武器ともなる。使用者の分身たるオリジン・キーという設定もお見事。
コンプレックスあるいは欠点が反転して長所となる、という構図は『ときどきパクっちゃお!』で完全に空振っていて俺もズッコケたんですが、本作ではうまく書き切られています。魔法少女ものにおける「未来の自分に一足早く手を伸ばす」というテーマが、主人公を少年に切り替えるに当たって「本来の自分を受け入れる」という形に変わったわけですね。いやー、なんか俺の中で少年魔法少女というジャンルがひと段落着いた気がしますね。実に快便。
――――うん。あと、正直彼方にも萌えた。
続編もアリ?
シリアス部分がほとんど手付かずの状態なので、あるかもしれませんね。バトルが意外にもけっこうなお点前だったので、歓迎します。次巻ではグレちゃんのハラペコ属性を突き詰めて、ついでにサービスシーンも入れてくれると嬉しいかな?かな?