『ハートキャッチプリキュア!』は悪と人間に優しいんだとおもう

プリキュアシリーズは敵に同情的

プリキュアシリーズは勧善懲悪ものですので、悪い奴が出てきます。当然それは正義によって否定されるわけですが、時に悪にも一部の理ありとするのが。また特徴だったりします。
ふたりはプリキュア!』では、ジャアクキングは世界のバランスを担う存在でした。また、プリキュアと仲良くなってしまう敵としてキリヤというキャラクターがいました。
ふたりはプリキュア!MaxHeart』でも光と闇のバランスという設定は健在であり、またジャアクキングの転生体とひかりの繋がりが描かれました。
ふたりはプリキュア!SplashStar』では、敵勢力は己の世界の存続を目的としていました。(結末はうやむやもいいとこでしたが。)また、満・薫という寝返ってプリキュアとなるキャラクターが初めて登場しました。
Yes!プリキュア5』では、敵勢力・ナイトメア内部での人間模様が積極的に描かれ、幹部が追いつめられ、プリキュアに敗れ消滅してゆく様を描く筆致は同情的なものでした。続編『Yes!プリキュア5GoGo!』や劇場版も含め、黒幕にはしばしば悲劇的な動機が設定されており、『鏡の国のミラクル大冒険!』におけるダークプリキュアは主人公ともいうべき存在でした。なにより、完全な味方にもならず、しかしプリキュアに心動かされ最後まで生き延びるブンビーの存在感は非常に大きなものがありました。
プリキュア5における敵キャラクターは、道を誤った者、転んでしまった者であり、シリーズの中でも特に繊細に描かれています。
フレッシュプリキュア!』では、初期に登場した3人の敵幹部イース・サウラー・ウエスターが、最終的に全員味方になりました。
かようにプリキュアシリーズにおいては、敵キャラクターは一概に完全悪とはされなかったわけです。こうした歴史を踏まえると、『ハートキャッチ』における敵勢力・砂漠の使徒もまた単なる悪としては描かれないことが想像できます。
彼らの組織的な目的は今のところ不明ですが、首領が「サバーク博士」であるところから妄想を広げると、砂漠化した故郷を救うというようなものになりそうな気もします。
また、プリキュアシリーズで仮面の男といえば『5GoGo』のエターナル館長です。キッズアニメの限界で詳細に語られてはいないものの、象徴的には、彼は愛した女性(フローラ)を得られなかった空虚を、物品収集で埋めようとしている人物といえます。サバーク博士が館長を参照しているとすれば、故郷で起こった悲劇をなにかで代償しようとしているのかもしれません。
もちろん、ダークプリキュアが味方になるのは既定路線です。マインドコントロールされている様子はないので、彼女にも悲劇があったのでしょう。ひょっとしたら、キュアムーンライトとの間に。

プリキュアは悪にもなりうる存在

プリキュア5』では、希望と絶望という対立軸が用意されています。面白いのは、登場人物がこの軸の中で揺れ動くことです。
プリキュアやその仲間も絶望してしまうことがあり、ナイトメアに属するものも希望を見出すことがある。そして、ふつうの人たちがどちらに傾くかということがときに戦いの行方を左右する。絶望に囚われた仲間たちを救出する24話、パルミエ王国の民が希望を取り戻す48話などは感動的でした。
敵をただ悪として描くのは、要するに気持ちよくぶっ飛ばすためであるわけですが、それは相手を同じ人間として見ないことになり、ドラマを薄くしてしまいます。それを打破するためには、悪は善になり、善もまた悪となる「可能性」を描くことが必要になります。
『ハートキャッチ』は、悪のプリキュアの存在と、プリキュアの心の弱さを描こうとしており、その「可能性」に目を向けているようです。
それは一方的に善を描くだけではたどり着けないヒューマニズムの賛歌であり、信用に値する作品だと思うのです。

まとめ

  • 砂漠の使徒とダークプリキュアはかわいそうな人なんじゃないかな
  • プリキュア5』を予習しておくと妄想が楽しくなるよ
  • 敵も味方も人間だものって言うと話に深みが出るよ
  • マリンちゃんかわいい!