今、ライトノベルにはハードボイルドと愛が足りない。

まだ全然まとまってないのだが、今、少し大事な話なので、ライトノベルを中心とするオタクフィクションと、ハードボイルドと愛の話をしたい。
ハードボイルドと愛が足りなくなっている原因は、ボーイミーツガールの隆盛にある。どっちも同じことを言おうとしているのかもしれない。
ごく大雑把な話をすると、かつてオタクフィクションの王道は英雄譚だった。ヤングアダルトってのがたぶんそうだ。英雄譚というのは、スポーツとか伝奇とか諸々含んだ相当広い括りで使っている。つまり、ヒーローが自らの信念に従って行動するタイプの物語。
それが、今はボーイミールガールが主流、というかほとんどを占めている。ライトノベルと呼ばれたものはだいたいそうだ。ボーイミーツガールの特徴は、ヒーローがヒロインを理由にして行動するところだ。
ゆえに、ボーイミーツガールにおいては、ヒロインがヒーローに物語の契機(あるいはそのもの)をもたらす。そこから、日常とかトラウマとかの諸問題系が発生してくる。
ボーイミーツガールにおいては、ヒロインがいなければなにも始まらない。だから、物語そのものが、主人公とヒロインの関係に基盤を置く。それが極まると、主人公とヒロインの間だけで全てが完結してしまう。いわゆるセカイ系
でも、セカイ系でなくとも、主人公とヒロインの関係が全ての中心に置かれることは変わりないし、単にヒロインが複数になっただけだったりする。で、どうなるかっつーと、話が湿っぽくなる。
バトルしようが世界を救おうが結局主人公とヒロインの関係についてしか語ってないから、主要登場人物の感情ってのを括りとして、その外に意識が出ていかない。それが悪いわけでもないしつまらないわけでもないけど、構造的問題なので、そういうのばっかりになる。
そこでハードボイルドなんだけど、ぶっちゃけ、ハードボイルドをそんなに嗜むわけではない。足りないものを考えたら、それってハードボイルドじゃないかってことになった。
じゃあここでいうハードボイルドってなにかっつーと、まずは登場人物が個々の事情と信念に従って勝手に動くっつーこと。主要登場人物同士の関係性に基くんでなしにね。
あとは、感情とか設定とかストーリーを説明するんでなくて、その場その場の会話を大事にするってこと。キャラがキャラになにかを伝えようとするってこと。
まあ、同じことかもね。
個人的にハードボイルド×ライトノベルっつったら『ゾアハンター』と『ジャストボイルド・オ・クロック』なんだけど、これは似てないようで普通に似てないけど共通点はある。いっちゃんわかりやすいのは主人公の動機がヒロインじゃなくライバルなとこ。しかもどっちもライバルが自分の分身。
でも、結局ヒロインが重くないからウケないんだよね。そこでボーイミーツガールとハードボイルドのバランスをどう取るかが課題。
じゃあ愛ってなんぞや。これはねー、前からすげえ喋りたかったんだけど、『朧村正』。ぶっちゃけニコ動でプレイ動画見ただけだったらから今までよう喋らんかったんだけど、近年のオタクフィクションであんだけ愛を熱烈に語った作品は類を見ないね。
朧村正』の愛ってのはね、誰かのために自分を懸けるんだよね。懸命ってやつ。それが、相手との関係ってものが関係ないんだよ。愛だから、としか言いようがなく懸命。あれは素晴らしい。
で、ボーイミーツガールにおいては運命の相手と出会うとこから始まるんだから、まず基本設計に「愛」は組み込みづらい。だいたい、そこまで辿り着けない。『ゼロの使い魔』なんかは辿り着いたけど、そういうものとはあんま思われてないもんね。
じゃあ幼馴染なり妹なり、既存の関係性を描くもんはどうかっつーと、それ、実態としてはトラウマなんだよね。ヒーローは呪いのようにヒロインを守るために動いてしまって、そこに意思ってものが見えづらい。もちろんそれはそういう必要があるんだけども。
だから、出会ったヒロインに対して(あるいはヒロインが主人公に対して)、意思でもってなにかを差し出す、そういう「愛」を描くライトノベルってのが欲しいなと思うわけ。
とすると、やっぱりヒーローの行動がヒロインに基いてしまう、というボーイミーツガールの構造的問題に突き当たるんだよね。そこで、ああ『アイシールド21』偉かったな、って思うの。
今の時代、「雄の生き方」とか正直説得力ねえよ。少なくともぼくはそんなもん本気で信じられないけど、でも誰かに言ってほしかった。「頂への道を見つけたなら」「ただ“登る”」って。
男がそうだから、『アイシールド21』の女にも愛があるんだよね。鈴音の愛っぷりなんかお前どこが15歳だって話で。女には愛男には力ですよ。
というわけで、ぼくは結局アイシールドがやりたかったんだなと。すげー広い意味だとそうなんだなと。確認したわけです。
で、現代のオタクフィクションのほとんどはボーイミーツガールですと。でも全部ではない。その例外が、日常系と、百合。でも日常系ってボーイミーツガールから非日常を引いたもんで、まあそんなに自由なもんでもないと思うわ。そこで百合の可能性が注目されるわけだが。
で、百合の可能性ってのを考えたときに、ついつい入り込んでしまうアーキタイプが、あれ。林家志弦『SISTER RED』。たぶん知名度的に『シアンとマゼンタ』の方が適切な例示なんだけど、残念ながら読んでない。
つまり、ガールミーツガールね。ボーイミーツガールの主人公が女の子になったやつ。でもそれ、まあ最初にやった人は偉いけど、二番煎じはオイシくねえなって話で。
そこで、なんとなく、『アカイイト』がよさげな気がしてきたりもする。プレイしてないけど。
そのへん諸々考えて、現時点でのぼくの結論は男女女のダブルヒロイン制。すげー途中の経路ぶっ飛ばしてるけど。

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